マチュー・ブレイジーによる待望のデビューコレクションが発表されるまでの間、創作を一手に担っているクリエイション スタジオは、2025-26年秋冬ショーでは創業者ココ・シャネルのコードを想起させる、巨大な黒いリボンを模したセットをグラン・パレに組んだ。今年初めに発表されたオートクチュールコレクションのように、今季も一貫したシャネル(CHANEL)のストーリーを描いたショーは、どこか軽やかな空気に満たされていた。
ツイードのスーツの人気を、いかに再燃させられるか。トレンドのファッションアイテムとして本格的に復活させることをブレイジーは期待されているが、クリエイション スタジオはひとまずレイヤリングで、ツイードのシルエットを一新した。ショート丈のものの上にはトロンプルイユ効果を駆使したチュールを重ね、いくつかのルックには首もとに可憐なリボンが装飾され、ボウタイやリボンといった、今回のテーマでもある「メゾンが大切にしてきたシグネチャー」に即している。
ほかにもさまざまな技法で、ツイードのスーツとドレスは併せられていた。そのひとつが、白いひだ襟の起用だ。ココ・シャネル自身も、黒いジャケットにコントラストをつけるために取り入れていたというシグネチャーのラフカラーが復活を果たし、マルチカラーのショート丈の1着には、クリーム色のラッフルが裾、ショルダー、首もとにあしらわれ、華やかさを加えていた。
セットから見てとれるように、クリエイション スタジオはリボンでできる表現をすべて探求した。首飾り、プリント、スパンコール装飾、カットアウト、ニット、ヘアアクセサリー。シルクブラウスの首もとに結ばれた黒いサテンのリボンは、まさにシャネルで、メゾンの精神を象徴するクラシックなシンボルだ。また、あらゆる年齢層の人にも似合うスタイリング術でもあり、他ブランドが取り入れると、誰もがシャネルへのオマージュとして捉える。
ツイードのスーツにニットにドレスと、あらゆるカテゴリーを網羅した今季のコレクション。パフスリーブをあしらったロングシャツ、おおぶりのパールネックレス、シフォンのジーンズ、サテンのシャーリング、立体的な白い花びらのプラストロンなどが詩的なタッチを加え、おとぎ話の世界を彷彿とさせる。
シャネルのクリエイション スタジオは、ブランドの基軸を知り尽くしており、彼らの知識と才能を尊重し、伸ばしてくれる新たなアプローチこそが、今メゾンが必要としているものだ。それをもたらして、シャネルを更なる高みへと導いてくれるのが、マチュー・ブレイジーなのだろう。
Text: Sarah Mower Adaptation: Anzu Kawano
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